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2007.10.22

石見安山岩 - 「匹見再発見」 11

切梨下で見られるゼノリス 西中国山地の懐に抱かれた益田市匹見町。町を貫流する河川は、よく「きれいだね」と褒められる。水質もさることながら、渓流に映える白っぽい石が独特の渓谷美を演出する。
 石の正体は、通称「石見安山岩」と呼ばれ、白亜紀(6500万-1億3500万年前)の火山活動で大量に噴き上がった火山灰が、降り積もって形成された。今の匹見の地盤となっている。
 この安山岩は、板状になっているのが特徴。匹見タウンホールの外壁には表匹見峡の石が使われているが、その形状はまるでれんがのよう。
 板状の安山岩は柱のようにそそり立ち、水の浸食も加わって険しいV字谷を形作る。
 匹見の岩石がすべて安山岩か、と言えばそうではない。例えば、匹見川中流域澄川地域の大半は、安山岩と異なる岩質の粘板岩だ。
 匹見町には名だたる鉱山はないが、隣接の益田市美都町には24年前まで、銅などを産出した都茂鉱山があった。銅などを含むのはスカルンという岩。これは、石灰岩など炭酸塩岩の中に、花こう岩などのマグマが入り込んだ際、接触部付近にできる鉱物の集合体(変成岩)だ。
 このマグマの熱が、隣接地の澄川地域の岩質にも影響を与えている。ちなみに、スカルンは谷口集落でも見ることができる。
 粘板岩の多い澄川を通り過ぎ、さらに上流の広瀬に向かう辺りから、岩質はかわり、特有の白い石が目立つようになる。溶岩流が熱で砕けた岩を次々とのみ込み、地表まで押し上げて噴出した「ゼノリス」(捕獲岩)と呼ばれる岩も見える。
 同じように、溶岩流の形がそのまま見られる個所は、下道川・丸小山トンネル入り口辺りの川底。付け替え道路の工事のため、ブロック積みの護岸になったが、溶岩流の模様は、澄んだ水を通して楽しむことができる。


写真:益田市匹見町広瀬の切梨下で見られるゼノリス


(文・写真 / 齋藤正明)


※この記事は、2007年10月21日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。

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