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2010.01.11

雪とともに - 「匹見再発見」 62

雪の朝  ここ数年、匹見では雪のある正月を迎えている。以前は当たり前の景色だったのだろうが、近年では雪のまったくない年も珍しくない。匹見の冬を体験するようになって15年。その間にも、肌で感じる冬の、雪の様子が変わってきているようにも思う。
 「奥地」集落の移転や匹見からの人の流出をうながしたきっかけのひとつといわれる「三八豪雪」。当時を知る人の話を聞いたり本を読んだりすると、その頃の雪との格闘がいかに大変だったかわかる。
 それ以来の大雪だという人もいた「平成18年豪雪」。何日も降り続く雪はたしかに不気味で、雪かきの手伝いに行った家では独り暮らしのお年寄りが不安な顔を見せた。以前とはまた違う意味で、雪は重圧になっているのかもしれない。
 圧雪になった道路を慎重に運転し、益田の市街地に出かけてみると、雪は気配もなく蝶々が飛んでいたりして拍子抜けすることがある。これだけ違うと、それぞれに別の種類の時間が流れているような気がしてくる。
 長年匹見で暮らしてきた人たちには、雪に苦労しながらの冬の過ごし方があるだろう。山への猟だったり、春を迎える準備であったり。その人なりの楽しみも必要。
 太平洋岸の温暖な土地で育った私は、不謹慎かもしれないが、雪を見ると少しワクワクする。新雪をぎうぎうと踏んで山を歩き、小さな冬鳥たちに出会い、木の冬芽がふくらんでいるのを見たりするのはひそかな楽しみだ。
 本格的な雪はこれからかもしれないが、年が明け、日が少しずつ長くなり、どことなく春が近づいている気配を感じることも。そうなってくると、冬が終わってしまうのを惜しむような気分になるのが不思議だ。

 

写真:つかの間、晴れた朝

(文・写真 /田代信行)


この記事は、2010年1月10日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。

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