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2008.07.20

虫たちの夏 - 「匹見再発見」 29

グンバイトンボ  「夏は夜」と書いたのは、清少納言。枕草子で、夏の夜の風情について、月や蛍を例に出してたたえている。
 夜になっても、家の中にはもやっとした熱がこもり、外の涼しい空気が恋しい。そんな時は、子どもと一緒に「夜のおさんぽ」。子どもの目的は、外灯に集まってくる虫たちだ。
 ひかりの周囲には、ガや小さな無数の虫が飛び交い、それを狙ってカエルやヤモリ、ときにはコウモリの姿も。そんな外灯の足元をたんねんに探していくと、「いたいた、クワガタムシだ」。
 コクワガタにノコギリクワガタ、ミヤマクワガタに、ときにはヒラタクワガタも。そんなにたくさん捕れるものでもないから、「宝」を探し当てたかのように大事に持ち帰る。子どもにとっては、匹見暮らしの醍醐味の一つだろう。
 カブトムシは、クワガタよりやや遅れて出現。これからが本番だ。
 夜明け、薄暗いうちからヒグラシが鳴き、やがて夏の暑さを連れてくるように、アブラゼミなどの大合唱。ツクツクボウシが鳴きはじめる晩夏まで、セミの主張は続く。
 涼を求めて、水辺へ。川べりの水が染み出しているような場所に、カラスアゲハが集団で水を吸っている。近づくと一斉に舞い上がり、日の光に翅がギラッと輝く。
 水辺の主役は何といってもトンボだ。渓流沿いを猛スピードで飛んでくるオニヤンマ。河原の見張り番、金属光沢のカワトンボ。希少種といわれ、肢に白い飾りをつけたようなグンバイトンボが、割と身近に見られるのもうれしい。
 「虫は苦手」という人も多いが、よく見ると案外表情があって親しみももてる。夏休みくらい、親子でじっくり虫につきあってみるのもいい。

 

写真:身近に見られる希少種グンバイトンボ

(文・写真 /田代信行)


この記事は、2008年7月19日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。


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2008.07.06

学びの場 - 「匹見再発見」 28

歓声をあげる川ガキ講座の参加者 三年ほど前から、夏休みの期間中に、「ガキ講座 in ひきみ源流キャンパス」が開かれている。高津大学という流域ネットワークが主催する、遊びのイベントだ。
 益田市内を中心に、県内外の各地から親子連れが集い、地元の人たちとで泳ぎ、魚を追い、料理をつくって食べ、真夏の水辺での一日を大いに楽しむ。
 全身を使いと触れ合うことで、川遊びの面白さ、川の大切さ、と同時に恐ろしさをも体感してほしいというのが狙い。
 が、子どもらにとっては、そんなことどうでもいい話。夢中で水の中をのぞきこみ、プカプカ川を流れ、岩から飛び込み、瀬を渡り、おいしそうに鮎や、おにぎりを頬張る。
 本人たちはまったく意識してないだろうが、こんなことが大きな財産になっていく、と信じたい。ああ、あの川であんなことしたなあと、いつかどこかで思い出してくれるだけでいい。
 こんなことを通して何か学んでいけるのは、子どもだけではない。一緒に活動する大人たちにとっても、楽しさを共有することで、自分のことや子どものこと、地元のことなどを「再発見」するきっかけになる。
 匹見には、川だけでなく山や森、田んぼや畑など、自然に恵まれた学びの場がたくさんある。さらに、それを活かすための技術や経験をもった大勢の「先生」たちがいる。
そんな「教室」と「先生」に、活躍してもらえる機会がもっと増えれば、また何か、新しい楽しいことが生まれてくるだろう。
 今年も7月20日、匹見町萩原地区で「川ガキ講座」がある。ぜひ参加してみてほしい。問い合わせは、高津川大学事務局(電話0856-24-8661)。

 

写真:水しぶき。歓声を上げる川ガキ講座の参加者たち

(文・写真 /田代信行)


この記事は、2008年7月5日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。