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2008.03.31

まちづくり - 「匹見再発見」 21


2月の「かまくらづくり」への参加者 匹見町の人々は、清水や空気のように清廉で人情味にあふれ、たとえ高齢であっても元気でよく働く。今もなお、戸数や年齢だけでは推し量ることのできない集落機能も温存されている。雄大な自然と心癒される原風景に抱かれた町には、まだ誰も気付いていない可能性が秘められている。
 先ごろ、観光施設、加工グループ、民泊実践者らを束ね、観光とボランティア活動を融合させ、新しい交流スタイルを創出しよう-と、「ひきみ田舎体験推進協議会」が設立された。
 地域イベント、自然体験、地元食材を使った伝統料理、宿泊施設など豊富な地域資源を結集させて、新たな匹見ファンを呼び込もうとする取り組みだ。
 実は、この協議会設立には、一昨年の夏から頻繁に訪れるようになった大学生たちの存在が大きく影響している。彼らは当初、携帯電話やメールが使えない、コンビニがないことに驚くごく普通の学生と思っていたが、ホームステイと農業体験をきっかけに地域イベントの手伝い、草刈り、中学校の修学旅行の企画・実践など、さまざまな形で地域とかかわり、地域間や世代間交流の面白さと、継続の必要性を実感するようになった。
 地域も、自分たちにできることを何か始めてみよう-と、協議会設立への機運が一気に高まっていった。
 協議会では、地域貢献に関心を持ち、意欲的な方々をボランティアとして受け入れ、宿泊や食事の支援を行う一方、会員相互で助け合いながら単独ではできなかった取り組みに挑戦し、交流を通じた活気あるまちづくりを目指そうとしている。
 大学生を中心とした若者との交流は、地域に元気をもたらし、間違いなく地域の方々の表情を豊かにしている。さらに若者たちがその変化に気付いたとき、この町に眠っている大きな可能性が発見される。


写真:この2月、夢ファクトリーみささで開かれた「かまくらづくり」に集まった参加者。地元の人、中学生、大学生が交流を深めた


(文・写真 /島田 満、田代信行)


この記事は、2008年3月30日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。


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2008.03.17

夏鳥たちの楽園 - 「匹見再発見」 20

 かれこれ40年前になるだろうか、益田市匹見町と広島県安芸太田町が接する県境にそびえる恐羅漢山(標高1346m)を目指し、中学生らと3泊4日の登山に出掛けたことがある。
 元気いっぱいの子どもたちに引っ張られ、初日は頂上を目前に匹見側で野営した。ブナの大樹が頭上を覆い、落ち葉でふかふかのカーペットのような地面の広がりは、森の不思議な国に迷い込んだような錯覚さえ抱かせた。
 夜明けごろ、谷間から小鳥のさえずりがこだましてきた。「キョロロー」「キョロロー」。もしやアカショウビンでは-。わが耳をうたぐるほどの低い鳴き声。「間違いない」。その時の感動は今でも忘れられない。
 アカショウビンは、全身が燃えるような赤色で染まったカワセミの仲間。夏季、繁殖のため南方から日本の広葉樹林にやって来る。数は少なく、野鳥愛好家でも間近で観察できるチャンスはめったにない。
 営巣地では朝夕、相手を探して鳴き交わす。カップルになると、雌は上げ膳(ぜん)据え膳の〝お姫様〟となり、オスがかいがいしく世話をする。ひなが大きくなると、夫婦で餌を運んだりするが、天敵のイタチに狙われることもある。
 この鳥を求め、10年前から匹見の山々を歩き回っている。入山はいつも未明。鳴き声を頼りに行ったり来たり。何日も粘ってねぐらや移動コースを確かめるが、あの特徴的な鳴き声を聞くと疲れが吹き飛ぶ。
 ホトトギスなど、ほかの野鳥に出合える楽しみもある。寝坊助のジュウイチ(カッコウの仲間)のさえずりは心を癒してくれる。
 匹見の広葉樹林は夏鳥たちが集う楽園でもある。

 

(写真は後日掲載します)

 

(文・写真 /福原純孝)

 

この記事は、2008年3月16日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。


2008.03.15

益田写真連盟展

 毎年恒例の「益田写真連盟展-心いやされる故郷の光と風」が、本日より開催されています。益田市内にある10の写真愛好家グループから、120点以上の写真が出展されています。
 ひきみ学舎からは、昨年に引き続き、ひきみ写真コンテストの受賞作品を出展しました。
 お近くにお出での際は、ぜひともお立ち寄りください。

とき:平成20年3月15日(土)~20日(木)
ところ:キヌヤ ショッピングセンター 3F (益田市駅前町)
2008.03.03

カメラの〝目〟 - 「匹見再発見」 19


まなびや賞に選ばれた「枝打ちをする父」 全国各地で〝ご当地写真コンテスト〟が盛んだ。その土地に足を運んでもらいたい、地元の魅力を再発見したい、というのが主な目的だろう。
 ひきみ学舎(まなびや)でも実施しており、2006年度は匹見の豊かな「水」の風景をテーマに行った。見慣れた風景さえも、カメラの〝目〟を通して生き生きと表現され、魅力を伝えた。
 07年度のテーマは「」だった。縄文の時代から山とともに生きてきた匹見にとって、「」の風景は欠かすことができない。森そのもの、そこに息づく動植物、材としての、そして山の幸を活かす技術など。
 ふだんあまりに身近で、かえって意識されることの少ない山や森、。応募された写真は、どれもがそんな何げない「」の風景を鮮やかに切り取っていた。
 緑を背景にさえずる真っ赤な鳥、田んぼの脇にツタをまとってたたずむ木、紅葉の季節に楽しげな子どもたち、そして、おそらく自分で植えただろうヒノキの枝を打つ姿・・・。
 何かテーマを一つ決め、あれもこれもとカメラを向けるうち、今まで見過ごしていたことにも少しずつ気付く。紅葉にも負けない色とりどりの新緑に驚き、木の器の滑らかな木目に見ほれてしまう。
 そんなふうに撮影された写真は、撮った人だけでなく、それを観た人にも深い印象となって残る。その場での感動を追体験させてくれるから-。
 また、写真は時間も軽く超える。古い写真は一瞬でその時代に引き戻してくれるし、記録し積み重ねていくことで、貴重な資料となっていく。
 このコンテストの写真たちが、そんな匹見の財産になっていけたら、と思う。

 

写真:ひきみ「木」写真コンテストで特別賞(まなびや賞)に選ばれた「枝打ちをする父」

 

(文・写真 /田代信行、 河野波香)


※この記事は、2008年3月2日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。