2007.11.26

甌穴 - 「匹見再発見」 13


和又集落上がり口の甌穴 が形作る造形美の一つに、甌穴(おうけつ)がある。これは、底の岩盤が浸食作用で掘られ、円筒形の穴になること。岩盤のくぼみに入った小石が流れで回転し、長い歳月を掛けて削ったものだ。
 埼玉県長瀞(ながとろ)や長野県寝覚ノ床などが有名だが、匹見流域でも観察できる。
 代表的な甌穴は、匹見発電所へ送る水の取り入れ口付近の河原(益田市匹見町下道)にあった。くぼみが深く、「これぞ甌穴の見本」とでも言いたくなるほど立派。残念ながら、取り付け道路工事に伴って消えてしまった。
 実はこの甌穴の付近では、別の甌穴を見ることができる。特大の穴で、近づいて見ると、底は小石がぎっしりと詰まり、魚影が確認できる。夕暮れ時、水中ライトを持ち込み、甌穴を浮かび上がらせてみたい−と思う。
 和又集落の上がり口にも、見事な甌穴があるが、水量が多くて全体像が確かめにくい。いつか潜って観察したいと思っていたが、体力がなくなってしまった。
 同集落の上流にある「鬼の釜」は面白い。昔話の主人公・桃太郎が生まれ出た桃のように、大きな岩が二つに割れ、しかも中が丸くえぐられている。御神木のように立派な木も生えている。
 もともと匹見の石は、硯(すずり)ような凝灰岩が大半で、きれいな甌穴ができやすいのだ。
 手軽に観察できる個所に、一の谷の鍋淵(なべふち)がある。この淵にある甌穴は、まるで五右衛門風呂の形。滑らかな赤みを帯びた凝灰岩が続く中で、ひときわ目立つ。
 反対に、馬橋の甌穴はかわいらしい。犬の餌入れに使うおわんのよう。橋の上から容易に見られ、格好の教材になる。
 匹見には、自然の造形が数限りなくあり、何も言わずに転がっている。


写真:和又集落への上がり口で見られる甌穴


(文・写真 / 齋藤正明)


※この記事は、2007年11月25日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。