秋の匹見峡散策 - 「匹見再発見」 9
いつまでも太陽がじりじりと照りつけた残暑もやっと一段落し、木陰に入れば秋の風を感じられるし、渓流沿いの遊歩道では、すがすがしい気分で散策を楽しむことができる。
散策のお薦めは、裏匹見峡の自然観察モデルコース。レストパークをスタートに、広見川沿いの遊歩道を平田淵まで歩き、国道488号を横切って鈴ヶ嶽(標高810m)展望台を目指す片道3kmちょっとの行程だ。
このコースの魅力は、変化に富んだ岩と清流の景色が楽しめることだろう。深い青をたたえる澄んだ淵(ふち)と、それに連なる躍動的な瀬。さらに、近づくと霧のような水しぶきで清涼感が味わえる大小の滝。川を埋める岩また岩は、上流に行くほど迫力を増してくる。
何万年もかけて形作られ、今なお変化をつづける渓谷美。圧巻は、遊歩道の終点・平田淵上流の天狗(てんぐ)の涼み岩から望む鈴ヶ嶽。三角の険しい峰が、のしかかるように迫ってくる。
そんな景色に彩りを添えるのが、草木の愛らしい姿だ。紅葉の時季には少し早いが、色づき始めた赤や紫の実は、一見すると地味だが、よく目を凝らして観察すると実に味のある花で、目を楽しませてくれる。
中でも、水がしたたるような岩の上で、小さな白い花を咲かせるダイモンジソウの群生は見ごたえがある。早瀬の音に合わせるよう風に揺れる姿を観賞するのは、渓谷歩きの醍醐味(だいごみ)でもある。
このコース沿いにはたくさんの炭窯の跡がみられる。途中には、かつてたたら製鉄をしていた場所もあり、山とともに暮らした匹見の歴史を垣間見ることもできる。
残念なのは、地元でもこの遊歩道を歩いたことのない人が多いこと。実際、最奥の平田淵まで歩いている人に出会うことはほとんどない。
ぜひ、平田淵コースを歩いてみたい-。そんな望みをかなえるイベント「秋の匹見峡ウォーク」が10月14日開かれる。申し込み・問い合わせは 匹見峡レストパーク(電話0856-56-0341)まで。
写真:秋の匹見峡を彩るダイモンジソウ
(文・写真 / 田代信行)
※この記事は、2007年9月30日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。