2007.07.09

ホタルの世界 - 「匹見再発見」 3

石谷川で乱舞するホタル 一瞬、乱舞するホタルの世界に舞い込んだような錯覚に陥った。見上げると、満天の星。聞こえてくるのは、心地よいせせらぎの音と、カエルの鳴き声。そこには、現代人が渇望してやまない懐かしい山里の光景が広がる。
 ここは、匹見川支流の一つ石谷川。もっと詳しく場所を特定すると、厳島神社(益田市匹見町谷口)から約300m上流である。
 実は、石谷川は知る人ぞ知るホタル見物のスポット。山深いだけあって、ホタルが飛び交うのは平地より1週間以上も遅い。だから、7月になってもホタルの幻想的な世界を堪能できる。何よりも人家の光や車のライトにじゃまされずに、心行くまで楽しめるのがいい。
 ホタルの写真を撮り続けて15年になる。シーズンになると、益田市近郊や旧美都町のスポットを歩き、光跡を追い求める。その経験からしても、石谷川のホタルの素晴らしさは「石西地域随一だ」と思う。
 奥出雲の地で生まれ育ったせいか、山や川がもたらす自然の恵みに無関心ではいられない。
 幼少のころ、兄に連れられホタル狩りに行った思い出は、年齢を重ねるごとに鮮やかによみがえる。つくづく「人間は自然の営みの中で生かされている」との思いを強くする。
 西中国山地の山懐に抱かれた匹見は、また昆虫の宝庫である。ホタルもその一つで、隠れたスポットは数多い。
 石谷川の川辺にたたずみ、ホタルが織りなす幻想的な世界に浸りながら、地球環境に優しい暮らしの在り方に思いをめぐらす―。何とぜいたくな時間だろうか。


(文・写真 / 吉崎佳慶)


※この記事は、2007年7月8日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。