姉妹都市交流 - 「匹見再発見」 4
大阪府高槻市と益田市匹見町は1971年、姉妹都市提携を結んだ。今年で36年になる。
当時、人口増加に悩んでいた高槻市(現在、35万人)と、過疎化にあえいでいた匹見町(同1500人)。それぞれ抱える問題が機縁となり、新しい街づくりへのヒントを得ようという発想から、交流が始まった。
夏休みを利用した交流事業の一つに、「サマースクール英語in匹見」がある。高槻市内の中学1、2年生と地元中学生が、大自然の中で英会話を学ぶ。
英会話の合間の野外活動では、ブルーベリーの摘み取り体験、林間ハイキング、川遊びなどでコミュニケーションを深める。
都会暮らしの多感な中学生にとって、魅力は何と言っても、四季の自然に彩られる田舎ならではの「ゆとり」や「やすらぎ」。関係者は、この仕掛けが、子どもたちの学習意欲をかき立て、健康な心身育成を促し、自然環境への関心を呼び起こすことを期待する。
都会と田舎が共に手を携え、「きれいな川」や「緑の山々」を守り、次世代に受け継ぐ意味はとても大きい。まして思春期を迎える中学生が「川や山の恵」の中で生きる人たちの地域に出向き、暮らしを体感することは有意義だ。
美しい山川を守っていくため、自分たちは何ができるか-。彼らが自問自答する提供の場は、これからもどんどん増やしたい、と心底から思う。
この息の長い交流事業の展開は、田舎の人々の目を覚ませる。あって当然の自然や伝統文化が、実はかけがえのないものであり、うずもれた地域資源の多さに気づく。そして、ふるさと再発見を起爆剤に、地域がよみがえるのではないか-と自信を持つ。
都会と田舎がそれぞれ秘める魅力(人・物・情報)を認め合い、双方向で情報発信することは、地域課題の克服につながる。
今年も25日から3泊4日の日程で、高槻市の中学生がやって来た。
(文・写真 / 山本裕士)
※この記事は、2007年7月29日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。
ホタルの世界 - 「匹見再発見」 3
一瞬、乱舞するホタルの世界に舞い込んだような錯覚に陥った。見上げると、満天の星。聞こえてくるのは、心地よいせせらぎの音と、カエルの鳴き声。そこには、現代人が渇望してやまない懐かしい山里の光景が広がる。
ここは、匹見川支流の一つ石谷川。もっと詳しく場所を特定すると、厳島神社(益田市匹見町谷口)から約300m上流である。
実は、石谷川は知る人ぞ知るホタル見物のスポット。山深いだけあって、ホタルが飛び交うのは平地より1週間以上も遅い。だから、7月になってもホタルの幻想的な世界を堪能できる。何よりも人家の光や車のライトにじゃまされずに、心行くまで楽しめるのがいい。
ホタルの写真を撮り続けて15年になる。シーズンになると、益田市近郊や旧美都町のスポットを歩き、光跡を追い求める。その経験からしても、石谷川のホタルの素晴らしさは「石西地域随一だ」と思う。
奥出雲の地で生まれ育ったせいか、山や川がもたらす自然の恵みに無関心ではいられない。
幼少のころ、兄に連れられホタル狩りに行った思い出は、年齢を重ねるごとに鮮やかによみがえる。つくづく「人間は自然の営みの中で生かされている」との思いを強くする。
西中国山地の山懐に抱かれた匹見は、また昆虫の宝庫である。ホタルもその一つで、隠れたスポットは数多い。
石谷川の川辺にたたずみ、ホタルが織りなす幻想的な世界に浸りながら、地球環境に優しい暮らしの在り方に思いをめぐらす―。何とぜいたくな時間だろうか。
(文・写真 / 吉崎佳慶)
※この記事は、2007年7月8日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。