アユ漁の夏 - 「匹見再発見」 1
6月を迎え、高津川流域はアユ釣りシーズンに入った。解禁日には、待ちかねた人たちが早朝から、さおを振る。前の晩から場所取りをする人も。川沿いのちょっとしたスペースには、県外ナンバーの車が目立つ。
ここ匹見(益田市匹見町)でも、「アユ放流・遡上(そじょう)・解禁」の言葉に何週間も前から胸躍らせる人が大勢いる。川の様子を見回り、仕掛けを準備し、解禁日が平日であれば有給休暇の算段だ。
釣果次第では、おすそ分けが回ってくる。魚体に黄色い星をもった艶やかで美しいその姿は、卯の花(ウツギ)やチナイ(エゴノキ)の白い花と合わせ、「夏は来ぬ」を実感させる。
匹見では、季節は川や山など自然の恵みをともなってやって来る。
トチやクリの実を拾い、何種類ものキノコが採れるようになると、山里に秋風が吹き始める。アユも「落ちアユ」になり、初夏とは違った楽しみをもたらす。
さらに、猟でイノシシが捕れたという話を聞くころには雪がちらつく。そして、冬。山菜を採る楽しみを抱き、春到来を待ちわびる。
四季の移ろいに身を任せた暮らし。「コウカ(ネムノキ)の花が咲いたら小豆をまけ」などというように、季節の野菜や米をつくる際にも、自然を通して身につけてきた、昔ながらの知恵や技術が活(い)かされている。
暮らしの知恵・技術は、山や川がはぐくんだ恵みというべきだろう。そこには、さまざまなものが容易に手に入る都会とは趣を異にする、匹見ならではの「豊かさ」がある。
私たち、ひきみ学舎(まなびや)では、この豊かさを少しずつ拾いあげて蓄積し、次世代へつなげることを目指す。
連載では、活動を通して「再発見」した匹見の魅力をたっぷり伝えよう。
(文・写真 / 田代信行)
※この記事は、2007年6月10日付の山陰中央新報掲載分を転載したものです。







